【meat.Again】

nagAsuraによる執筆&オンラインゲームの日記。

スポンサーサイト

--/--/-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



堕ちる夢

2011/09/29 04:59
 不自由な少女が眠り、小鳥になった。
夢の中、暗く低い場所で全てを探す。
思う侭に滑空し、宝を見つけては飛び立つ。
そんな幸せな夢だ。

 ある時、遥か空の上で大きな鳥が鳴いた。
大地は荒れ、木々は燃え……小鳥も羽根を焼かれた。
小鳥は堕ちる、成す術も無く。

「これからどうしたらいいの」
もう飛び立てない小鳥は嘆く。

「五月蝿い小鳥、貴女が全て悪いのよ」
もう戻れない大きな鳥が笑う。

嵐の中、明るく高い場所で全てを奪う。
思う侭に妬み、鳴いては焼き尽くす。
それは痛快な現実だ。

 何もかも終わる前に、小鳥は静かに瞼を閉じた。
やがて大きな鳥は満たされ、鳴く事を止めた。


 小鳥の亡骸を探せ。
大きな鳥を堕とせ。
何もかもを望む者が居るならば……
小鳥の夢を続けるしか、道はないのだ。


ハイズ軍事区画本部、資料館長――アブサント・タクセクの手記より。
[堕ちる夢]の続きを読む
スポンサーサイト



SamsaraAsura-01 人形の主

2011/10/14 22:51
暗闇。その男は暗闇の中に居る。
人々はその男を嫌悪し、蔑んだ。
男の名はセド・バヒルアー。
その突出した才によって得た富と名声を……、今この時でも裏切り続ける男だ。

 人の期待を裏切れば排除される……、それはこの世界だけの事だとは言い難い。
人と人が理解し合うという事はとても難しい。
当然の事ではあるが、その事をしばしば忘れるのもまた人である。
つまり、彼がこの場に居る事はごく自然な事と言える。

 部屋というよりも、檻と言ったほうが良いだろう。
彼が暮らす施設は暗く狭く、不気味なほどに静かだ。

「来たか」

「では、まずその後の経過を聞かせてくれたまえ」

彼……、セドは私に背を向けたままそう呟いた。


 自律機械で覆われた半球形の一室、窓は無く当然外光は差さない。
食事・排泄・睡眠等の生活における必須事項は全て自律機械によって管理され、
本人の意思とは無関係に行われる。
この様な施設は“チョーカー”と呼ばれ、主に刑罰や看護・福祉等に用いられる。
事実だけを言えば、特異な者のみが住まう場所である。

 最近の急増しているチョーカーの中でも、ここは更に特異な場所として知られている。
通常のチョーカー内の生活では、居住者の自由は認められない。
ただ自動的に与えられ、精神を病む者も多い事からその様子が伺える。
刑罰はともかく看護・福祉としては致命的な欠陥だが、
それを補う人員を割ける程この区画には余裕が無いのである。
否、余裕が無いと言うならば……皆平等に余裕が無い。

 たった今……全面的な戦争が起きても不思議では無いこの世界。
緊張と興奮に包まれたこの区画内で、異質にも余裕を保つセドが目の前に居る。
公表されている情報では、彼は厳罰執行を明日に控え、拘禁中とされている。

しかし、実際はこの冷徹なシステムを持つ筈のチョーカー内で、
何不自由無く暮らしているのだ。
掟破りの外部通信手段を有し、自律機械も他律機械に換装されている。
各種娯楽機能さえ持つ、唯一の前提を覆したチョーカー。

それがこの檻の本当の姿であり……、彼の余裕の正体である。

付け加えるならば、明日の厳罰執行も行われる事は無い。


 苛立ちと嫌悪感をどうにか鎮めながら、私はようやく言葉を発した。

「……潜入報告、調査対象と接触し、現在も協力体制を継続中です」

「探査対象の捜索部隊も各班展開中――」
 
経過報告の途中、不意にセドは軽く開いた右手を掲げて私の言葉を遮る。

「……人形は」

「“私の人形”は見付かったのか?」


 その瞬間、セドの正面に位置する機械の壁が歪んだ。
同時に私のセドへ対する嫌悪感は殺意へと転化している。
歪んだ壁は彼へと告げている……、“二度とその言葉を口にするな”と。

「どうしたのかね、冷静な君らしくないな?」

「ほら、早く報告を終わらせてくれ」

 彼は、セドの余裕はそれでも歪む事は無い。
彼を歪める事が出来る存在が居るのなら、それは彼の求める人形だけだ。
知っていた筈の事実を改めて突き付けられ、大きく歪んだのは私の方だった。

「……人形は、未だ消息不明、です」

「報告を完了します……」

 狭く暗い彼の檻から、私は足早に遠ざかる。
これ以上のセドとの接触は、私を狂わせる。
分が悪いでは済まない、彼の男が持つ“力”は圧倒的で、私では敵わないのだ。
何故なら、私は確かに彼の頭部を狙って――拳を放った筈なのだから。




| Home |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。