FC2ブログ

【meat.Again】

nagAsuraによる執筆&オンラインゲームの日記。

スポンサーサイト

--/--/-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



※注意、不快な思想が多分に含まれています。「乙女振り振り」

2011/10/22 06:59
 1984年、冬。
日本在住の評論家、キース・エインズワースが残した著書、
“乙女心による少子化 4つの接点”によって――世界は大きく震撼した。

 著者は1911年、イギリスで3人姉弟の末っ子として生まれた。
好奇心旺盛でいながら、淡白な振る舞いが目立つ人物であったと言われている。
 医学を積極的に学び、若くして医師に。

 第二次世界大戦中は海軍に志願し尽力、
ドイツ海軍Uボートによる通商破壊の影響で疲弊した家族や知人を救う為に
大戦後は精神科医として治療に心血を注いだ。

晩年、731部隊に興味を持ち日本へ渡る。
努力も虚しく相次いで家族が自殺し影響からか、
彼は薬学と細菌兵器を研究し、ある薬を発明した。

 先の著書は昨今の女性の恋愛におけるロマンティシズムに潜在する、
少子化への接点を解説・批評したものであり――
その大半が女性蔑視的な観点から書かれた物であると推測できる。

この著書は良くも悪くも世界中で話題となり、影響を及ぼした。
熱狂的賛同者による暴行事件を始め、テロや反対運動……。
小さかった話題は強力な火種となり、
2016年を境に世界各地で大規模な戦争が勃発した。

 2089年、春。
著者が死去して100年を記念し、ある研究機関によって博物館が建てられた。
知っての通り2036年には既に世界総人口は1億を下回っている。
女性はもはや管理されなくてはならない数となり、
人類は絶滅の危機を意識せざるを得ない状況となった。

 特に2041年の日本では倫理観を無視した法が制定され、
女性の社会的地位・人権は大きく失墜した。
かつて日本の多くの男性が恋愛においてそうであった反動か、
女性は“選り分け”を政府の厳正な管理の下で受ける事となった。

 選り分けにて審査に落ちた女性の扱いは残酷なものだった。
詳しくは正常な精神状態では説明が困難な為に省くが……
嘗てのネットスラングを捩った呼称が与えられた。
“乙った”女性を略して乙女と称され、この呼称もまた、世間を騒がせた。

 個人の思想や嗜好に対して、否定に次ぐ否定でコミュニケーションを繰り返した人類。
知性あるが故に欲に縛られ、個を追求しては全を忘れた
――闘争心の旺盛な種族のその結果がこれである。
これほど拙い争いを繰り返してもまだ懲りなかった辺りは流石である。

 先の博物館は希少なサンプルとして乙女を研究・管理・展示しており、
精神的治療を名目に“HB剤”を投与していた。
これはキースの発明した抗鬱剤や細菌を独自に改良し、発明された生物兵器であった。

 HB剤を投与された者は例外なく依存症に陥り、
薬の効果が切れた場合は正常な判断能力を失い……暴れる。
これが末期になるといわゆる“ヘッドバンキング”を以って
薬を求めるという奇怪な行動をとるようになるのである。
そして周囲に頭部を自ら打ち付け、やがて絶命する。
しかし、これはあくまで副作用であり、本来なら病原性の細菌によって死に至る。

 この博物館を基点に人類が滅亡への道を走り抜けたのは、最早言うまでも無い。





上記の文章はフィクションです。
実在の人物、団体、物品、事件等には一切関係ありません。

言い訳その他もろもろは追記にて。 ↓
[※注意、不快な思想が多分に含まれています。「乙女振り振り」]の続きを読む
スポンサーサイト



SamsaraAsura-01 人形の主

2011/10/14 22:51
暗闇。その男は暗闇の中に居る。
人々はその男を嫌悪し、蔑んだ。
男の名はセド・バヒルアー。
その突出した才によって得た富と名声を……、今この時でも裏切り続ける男だ。

 人の期待を裏切れば排除される……、それはこの世界だけの事だとは言い難い。
人と人が理解し合うという事はとても難しい。
当然の事ではあるが、その事をしばしば忘れるのもまた人である。
つまり、彼がこの場に居る事はごく自然な事と言える。

 部屋というよりも、檻と言ったほうが良いだろう。
彼が暮らす施設は暗く狭く、不気味なほどに静かだ。

「来たか」

「では、まずその後の経過を聞かせてくれたまえ」

彼……、セドは私に背を向けたままそう呟いた。


 自律機械で覆われた半球形の一室、窓は無く当然外光は差さない。
食事・排泄・睡眠等の生活における必須事項は全て自律機械によって管理され、
本人の意思とは無関係に行われる。
この様な施設は“チョーカー”と呼ばれ、主に刑罰や看護・福祉等に用いられる。
事実だけを言えば、特異な者のみが住まう場所である。

 最近の急増しているチョーカーの中でも、ここは更に特異な場所として知られている。
通常のチョーカー内の生活では、居住者の自由は認められない。
ただ自動的に与えられ、精神を病む者も多い事からその様子が伺える。
刑罰はともかく看護・福祉としては致命的な欠陥だが、
それを補う人員を割ける程この区画には余裕が無いのである。
否、余裕が無いと言うならば……皆平等に余裕が無い。

 たった今……全面的な戦争が起きても不思議では無いこの世界。
緊張と興奮に包まれたこの区画内で、異質にも余裕を保つセドが目の前に居る。
公表されている情報では、彼は厳罰執行を明日に控え、拘禁中とされている。

しかし、実際はこの冷徹なシステムを持つ筈のチョーカー内で、
何不自由無く暮らしているのだ。
掟破りの外部通信手段を有し、自律機械も他律機械に換装されている。
各種娯楽機能さえ持つ、唯一の前提を覆したチョーカー。

それがこの檻の本当の姿であり……、彼の余裕の正体である。

付け加えるならば、明日の厳罰執行も行われる事は無い。


 苛立ちと嫌悪感をどうにか鎮めながら、私はようやく言葉を発した。

「……潜入報告、調査対象と接触し、現在も協力体制を継続中です」

「探査対象の捜索部隊も各班展開中――」
 
経過報告の途中、不意にセドは軽く開いた右手を掲げて私の言葉を遮る。

「……人形は」

「“私の人形”は見付かったのか?」


 その瞬間、セドの正面に位置する機械の壁が歪んだ。
同時に私のセドへ対する嫌悪感は殺意へと転化している。
歪んだ壁は彼へと告げている……、“二度とその言葉を口にするな”と。

「どうしたのかね、冷静な君らしくないな?」

「ほら、早く報告を終わらせてくれ」

 彼は、セドの余裕はそれでも歪む事は無い。
彼を歪める事が出来る存在が居るのなら、それは彼の求める人形だけだ。
知っていた筈の事実を改めて突き付けられ、大きく歪んだのは私の方だった。

「……人形は、未だ消息不明、です」

「報告を完了します……」

 狭く暗い彼の檻から、私は足早に遠ざかる。
これ以上のセドとの接触は、私を狂わせる。
分が悪いでは済まない、彼の男が持つ“力”は圧倒的で、私では敵わないのだ。
何故なら、私は確かに彼の頭部を狙って――拳を放った筈なのだから。




| Home | Next
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。